特集記事 - ベトナムの緊急医療搬送 ラフィ・コット医師(ファミリーメディカルプラクティス 院長・CEO)

2018年05月08日(火)00時00分 公開
特集記事 - ベトナムの緊急医療搬送 ラフィ・コット医師(ファミリーメディカルプラクティス 院長・CEO)

ファミリーメディカルプラクティスの創設者である、ラフィ・コット医師は、20代のころから、ドクターヘリのパイロットとして活躍。医学部卒業後は、医師として緊急医療搬送に携わってきました。現在、ラフィ医師はベトナム航空の専属メディカルダイレクターとなっています。また、ファミリーメディカルプラクティスは、緊急医療搬送が可能なメディカルセンターとして1998年に正式な認定を受けています。
 

 

緊急医療搬送は難易度の高いミッション

緊急医療搬送は、非常に難易度の高いミッションです。その中でも人工肺とポンプを用いた体外循環回路治療(ECMO) 装置を用いての搬送ほど、複雑なものはないでしょう。

ECMO装置とは、心臓と肺の機能が十分でない患者の体内から静脈血(酸素化されていない血液)を取り出し、人工肺で酸素化した(二酸化炭素を除去した)血液を体内へ戻す、生命維持装置です。患者の心臓と肺を一旦体内で切り離し、ECMO装置が代わりに血液循環・血液の酸素化を行い、生命の維持をするのです。

ECMOを用いた海外搬送では、搬送中に患者の心臓を体内にて一旦切り離しします。生体工学専門家、看護師、医師など、12-14人の医療スタッフが携わり、搬送中、飛行機内ではエンジンノイズがあるため、スタッフ全員が常に目視で患者の容態を確認します。

 

 

困難の連続 - リスクの中のチャンス

ファミリーメディカルプラクティスで初めてECMO搬送を行ったのは、ホーチミン市・タンソンニャット国際空港で倒れたロシア人患者のケースでした。

この患者は直ぐにホーチミン市の心臓専門病院に運ばれましたが、海外での専門病院での治療が必要とすぐに判断されました。

当時、ベトナムを含む近隣地域では、ECMO搬送が出来る病院はありませんでした。患者の父親と面談し、その状況と、当メディカルセンターでも経験がない、とてもハイリスクな搬送であることを説明しました。

その時彼は私にこう言いました。

「わたしのたった一人の娘をどうか助けて欲しい。あなたたちにとってはリスクが高いだろうけれども、わたしはリスクの中にあるチャンスに賭けたいのです。」

他にオプションがない中、当メディカルセンターは患者を私たち自身で海外搬送することを決断しました。

ECMOを取り付けた、特注の担架ベッドを作成。

様々なケーブルやチューブが突き出し、酸素ボンベや様々な機器が付いた担架に、患者が乗せられます。

最終的には、担架の両先端に様々な医療機器が積み上げ、取り付けられた状態に完成。

患者を病院のベッドからこの担架に移動し、ECMOを接続するまで、5時間の時間を要しました。

 

ベトナム航空の協力のお陰で、カーゴの入口ドアが大きいATRの飛行機を確保。

そして、技術チームと機内を改造設計し、機体の中心部に担架ベッドを設置、医療・サポートチームの待機場所を後部に配置。

 

搬送には、医師5名と看護師1名が随行。

また、搬送には多量のバッテリーを持参し、生体工学専門家が、医療機器への電力供給の調整を行いました。

万一に備え、ラボ検査員も携帯用検査キットを持ち込み待機。

搬送チームの一人一人のプロフェッショナルが全力を尽くし、患者をホーチミン市からバンコクの病院へ無事搬送しました。

搬送先のバンコクの病院にとっても大変ハードルの高いケースでした。

その病院は、それまでECMO装置を取り付けた患者を扱ったことがなかったのです。

当メディカルセンターで患者に取り付けた装置から搬送先の病院の装置に切り替えなければならなかったわけですが、その装置のメーカーが違うものだったため、さらに困難な状況でした。

ファミリーメディカルプラクティスの医療チームが、3時間かけて無事切り替えを行いました。

患者をバンコクの病院に託し、ホーチミン市への帰路に就いてからやっと、自分たちがこの困難なミッションをやり遂げたのだという現実を実感し、この成功の意味を理解しました。

患者はその後3ヶ月入院し、無事ロシアへ帰りました。

 

 

緊急搬送国内実績No.1

ファミリーメディカルプラクティスは、マイナーなケースから始まり、このECMO搬送のような困難なケースまで、様々な海外・国内医療搬送を行ってきました。

緊急医療搬送において、いまやベトナム国内で最も実績を持つメディカルセンターとして知られています。

ECMO搬送においては、当メディカルセンターの実績をもって、ベトナムは全世界で7カ国目のECMO搬送可能国となりました。

 

 

 

<著者紹介>

ラフィ・コット医師
ファミリーメディカルプラクティス
院長・CEO

 30年程前に医療プロジェクトの為にイスラエルより渡越。1994年にファミリーメディカルプラクティスを設立。
ベトナムの医療を知り尽くし、明確なビジョンでベトナムの医療を牽引してきたパイオニア。
国内の恵まれない地域の生活向上への貢献にも積極的に取り組んでいます。

 

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