日本の外国人労働者受入拡大でベトナム人労働者に懸念も

2019年03月20日(水)00時00分 公開
日本の外国人労働者受入拡大でベトナム人労働者に懸念も

<2019年2月10日、川口にある教会で日本在住ベトナム人がテトを祝う様子(ロイター/Issei Katoより)>

 

1993年より、発展途上国からの労働者に技術提供をする目的で、日本は技能実習生の受け入れを開始した。しかし、専門家からはこの制度が早期段階で乱用され始めていたとの指摘も上がっている。

 

 

2018年末頃、あるベトナム人女性が技能実習ビザで日本に入国後に妊娠が発覚した。
その際、ベトナム人女性は「中絶するか、ベトナムに戻るか」という決断を迫られたという。

 


ベトナムに戻ると、日本に来るためにした借金1万ドル(約110万円)の返済が不可能になってしまう。


「女性は日本で働き、借金を返さなければならない」と全統一労働組合書記長の佐々木史朗氏は女性の代わりに主張し、今回のような脅迫は少なくないと述べた。

 

日本の高い賃金に惹かれるベトナム人は多い一方で、日本渡航のための借金返済で苦しむ若いベトナム人も増加している。日本の外国人労働者の中でも急激に増加しているベトナム人だ。肉体労働者の受け入れ増加を目的とした4月から施行される新たな制度がベトナム人労働者に影響を与えることが懸念されている。

 

 

アジア経済研究所の石塚 二葉氏は、「中国の経済成長と賃金上昇に伴い中国人実習生は減少している。一方、ベトナムでは高いレベルの教育を受けた若者でも失業率が高く、海外で働きたいと考える若者は増加している」と述べた。

 

技能実習生制度は移民政策に消極的な日本が行う肉体労働者の裏口ルートとして知られている。技能実習生に対する、低賃金や賃金未払い、残業、暴力、セクハラなどが報告され、問題視されている。一方で、ベトナムでは紹介業者が法外な手数料を要求することが問題視されている。

 

活動家や専門家、労働組合関係者、技能実習生へのインタビューによると、労働者不足を解消するために制定された新たな法律では、このような問題がさらに多く発生する可能性があるという。

 

犯罪の増加や社会構造に対する脅威に保守的な考えをもつ安倍首相は批判を恐れ、12月に制定された新たな法律は「移民政策」ではないとの立場を示している。

 

公益社団法人自由人権協会の旗手明氏は「事実、日本は既に移民の受け入れを行っている。しかし、外国人は永住するのではなく、一時的に日本に滞在するという前提があるため移民政策と呼ばない。社会からの需要にも、労働者の要望にも対応できていない」と話した。

 

 

増加する問題


1993年より、発展途上国からの労働者に技術提供をする目的で、日本は技能実習生の受け入れを開始した。しかし、専門家によるとこの制度は早期段階で乱用され始めていたという。

 

技能実習生の問題が注目されたのは2018年の新たな法に関する議論の際だ。

 

特に注目されたのは、ある4社が2011年に発生した福島原発事故の除染作業に技能実習生を採用していた問題だ。そのうちの2社は適切な賃金を払っていないと非難され、5年間技能実習生を雇用できない行政処分を受けた。その他の2社は法務省から警告を受けている。

 

 

厚生労働省が6月に公表した調査では、技能実習生の70%以上に対し、時間外労働や安全管理といった労働基準法違反があることが明らかになった。雇用者全体での労働基準法違反は66%であるため、それより多いということになる。

 

 


<2019年2月26日、ベトナムからの実習生が見附市のニット工場で働く様子(ロイター/Linda Siegより)>


2017年、労働状況の監視や実習生の保護を目的とする外国人技能実習機構が設立された。3月、外国人技能実習機構は外国人労働者も日本の労働基準法が適用されることを改めて主張した。特に、妊娠中の労働者に対する不平等な扱いを禁止するよう求めた。

 

専門家は、2017年に厳しい労働環境により7000人以上の技能実習生が退職をしたと話し、偽造書類で賃金の高い仕事を約束する違法ブローカーに日本に送られた外国人労働者のうち半分以上はベトナム人だとした。

 

技能実習生は企業を変更することが認められていなく、入社した会社を辞めるということは不法滞在していることになる。一部はNPO団体や労働組合に助けを求めるが、それ以外の多くは労働闇市場に流れていくという。


在日ベトナム共済会の山下茂氏は「日本の労働環境は、故郷で言われていた内容と全く異なる。逃げ出した労働者は故郷で働くだけでは返せない借金をしているため、闇市で働くしかない」と述べた。

 

 

 

問題への取り組み不足

 

新たな法律では、人材不足が懸念される建築や介護などの分野で、延べ34万5000人の肉体労働者を受け入れることが可能になる。「特定技能」という在留資格では5年間日本に滞在することが可能になるが、家族の入国は認められていない。

 


2種類目の在留資格は、建設、造船分野に限定されているが、長期滞在することが認められ、家族を連れてくることもできる。


Nguyen Thi Thuy Phuongさん(29)は夫と小学生の子どもをベトナムに残し、技能実習生として見附市のニット工場で働いている。

 

繊維産業に従事する技能実習生への労働基準法違反が多く報告されたことを背景に、今回の新たな法律は繊維産業には適用されない。

 

 

現在、Phuongさんは家族と共に日本に3年以上滞在することを望んでいるという。

 

 

仕事の休憩中、Phuongさんはロイター通信の取材に対し、「日本で生活することは便利だし、空気もきれい」と慎重な日本語で話した。

 

民間企業や個人事業主は、雇用主と雇用者の間に入る仲介業者として登録することができる。新たな法律のもとでは、「公式支援団体」の免許は必要でなくなる予定だ。

 

 

今後も増加する外国人労働者に対応すべく、4月1日に厚生労働省入国管理局は入国管理庁へと格上げになる予定だ。

 


15日、法務省は外国人労働者にも日本の最低賃金を適用させることを含んだ新たな法律を公布した。


佐々木氏は、政府は外国人の労働環境ではなく在留資格に焦点を当てていると語る。


公益社団法人自由人権協会の旗手氏は、一部の企業は、企業やサプライヤーが労働者の権利を侵害することで、投資家を失うリスクに気づいていると述べた。

 

新たな法の実施は急がれており、地方自治体では支援が十分ではない状態で多くの外国人労働者を受け入れることに対する懸念が高まっている。

 

神奈川県の黒岩祐治知事は、ロイター通信の取材に対し「外国人労働者を受け入れるための枠組みが整っておらず、外国人労働者受け入れを単なる労働者不足解消として考えているのであれば大きな問題だ」とコメントした。

 


1979年にベトナムから日本に渡航した高山貴(ベトナム名:Cao Son Quy)さんは、2008年のリーマンショック後、多くの外国人がリストラされたことに言及し、2020年の東京オリンピック後も同様の状態になるのではないかと懸念していると話した。

 

高山さんは、テトのお祝いが行われている東京近郊の教会で「東京オリンピックが終わったら、悲劇が起こるだろう。もう悲劇は見たくない」と話した。

 

 

出典:VnExpress

 

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